プリンタインクの退色テスト 紫外線による変色はインクによって違いがあるのか。 その1(準備編)
メーカー純正のインクは高すぎる。
カートリッジに高価な物が使われているなら納得いくのだけれども、実際はそんなことないでしょうに。
互換インクでも、名の知れたメーカーが出している物は、純正よりも幾分か安いものの、それでも少し高い。
ノンブランドの互換インクは、1個一色130円程度で売られている物がたくさんある。全色揃えても数百円ですよ。数百円。純正インクカートリッジのフォトマゼンタなんてゆう、使ってるのか使ってないのか分からないようなインク1個分相当ですよ。
やっすいインクで問題が起こらないのであれば、ぜひ利用したい。なにせプリンタは数千円程度で買えるのに、プリンタより高いインク代ってかなり納得いきませんっ。
「それじゃあ、人柱になってインクを調べてやろうじゃないか」そんな軽い気持ちから比較をすることにしました。
すでにテストを行う事を周りに言った手前、「お前、アレどうなった」と聞かれても、「えっ、めんどくさいから止めた」なんて事は「明日から本気出すにゃ」の猫並みの奴と思われるので、それは決して出来ない。
もし、互換でいいインク見つけたら、「純正なら500円くらいかな、このインク代・・・」。「途中でかすれたりしないでください。お願いしますプリンタの神様・・・。」などとドキドキしながら待つ大っきい用紙印刷も、きっと左団扇で眺める事が出来るようになるに違いない。
やるからには、中途半端な事をしていたら、参考にもならないどころか、「お前のテスト結果を信じて互換にしたのに・・・」「互換で汚れたノズルを掃除しろっ」などと末代まで言われる事にもなりかねない。
以前に乾燥テストを行った時に、純正インクと互換インクとでは、明らかに性質が違うものでした。
性質が違うのであれば、紫外線による退色・経年による変色などにも、当然、違いがあるだろうと興味がわくところです。
よって今回は、紫外線による退色テストを行うことにしました。
テスト環境は以下のとおりです。
試験場所
1.光のあたらない冷暗所(比較用)
2.紫外線削減のない蛍光灯下30cmの場所
3.日中日光が良く当たる屋外の場所
蛍光灯は一日12時間程度。屋外設置は屋根がある場所で24時間放置。湿気を吸わないよう透明フィルムで密封してあります。
試験に使用する用紙は以下の3種類です。
使用用紙
1.マット紙
2.光沢紙
3.半光沢紙
肝心な試験に使用するインクは下記の3種類。
使用インク
1.メーカー純正インク
2.有名メーカー製互換インク
3.格安の互換インク
という事で、さっそく試験用インクとインクを取り分けるビン、用紙他を購入しました。
経費は既に1万弱・・・。もう後には引けませんっ。
小ビン 60本購入 (画像は一部です)
テストに使用したインクはエプソンインクジェットプリンタPM-3700Cに使用するインク(IC5CL06、IC1BK05)です。「メーカー純正」「互換インク(エコリカ)」「互換インク(ノンブランド)」の三種類。
カラーインク3種類 (左から、ノンブランド、エコリカ、純正)
ブラック3種類 (左から、純正、エコリカ、ノンブランド)
このカートリッジのインク色数は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、フォトシアン、フォトマゼンタの6色。各色を未使用のインクタンクから抽出して1週間以内に紙に塗りました。塗る際は色が混ざらないよう、新しい綿棒にしみこませ、ひと塗りしています。
試験用紙に塗り付け乾燥させた後、すぐに同じ条件にてスキャナーで取り込みをしました。
補正機能を使っていない為、実際の色と若干異なっていますが、退色比較は分かり易くなるはずです。きっと。
↑ 塗りつけした用紙全部の画像です (スキャナ画像は別です)
何れかに変化が見られた場合、用紙を再度スキャナーで取り込み掲載します。
比較時に、実験開始直後のスキャナ画像も載せます。
プリンタインクの退色テスト その2 (屋外・7日目)
試験開始後、1週間が経った日。
「まあ、こんなに早く変化は無いだろうけど、念のため確認しておくかな」と、屋外に出しておいた用紙を確認したところ、「えっ、薄くない?」「いや、薄いよ」「確実に薄くなってる!!」
なんと、ノンブランドのフォトシアンが明らかに他のものよりも薄くなっている。
左から「マット紙」「光沢紙」「半光沢紙」のフォトシアン。
互換のフォトマゼンタも若干薄くなっているような気がする。
てゆうか、純正も若干薄いような・・・。なぜかフォトマゼンタはノンブランドが鮮やかなまま。
これが
こんな感じに。
ちにみに、「ライトマゼンタ」と印刷してありますが、「フォトマゼンタ」が正解。
さらに実験を始める前の色と比較すると、ノンブランドのシアンも若干薄くなっている。
スキャナでと取り込んだ画像では分かりにくいので、こちらは載せません。
そして用紙での退色度合を比較すると、光沢用紙がもっとも退色している。
用紙にしても光を跳ね返す光沢紙の方が、退色には強いと思っていたが、そんな事はなかったようだ。
プリンタインクの退色テスト その3 (屋外・7日目)
他の所要があり、研究用の画像、観察記録は取りだめているのだけれども、ブログ構成が追いつかず、実際の日付とは大きく異なってしまっているのはお察しください。
さて、とりあえず前回更新の反省を踏まえ、取り込んだ画像全てをアップしてゆくことにします。
試験開始直後用紙
試験開始後8日経過
※スキャナーで同じ条件にて取り込み
当初は1年くらいかかる試験を覚悟して始めたけれども、以外な事に1週間程で明らかな違いを見せてくれました。プリンタインクだけに目が行ってしまいますが、何気にボールペンの字が薄くなってて紫外線の破壊力が伝わります。
ついでの報告になりますが、屋内蛍光灯下の用紙については、まったく、全然、これっぽっちも変化が見られない為、割愛します。
頑張って蛍光灯の下30cmに試験用紙を設置したのに・・・。
蛍光灯も微量ながら紫外線が出ている事は承知しておりましたが、なんて生やさしいんだ。
プリンタインクの退色テスト その4 (屋外・30日目)
以下が屋外一ヵ月後の結果です。
どうですか。開始時のシートが無くてもいい感じに結果が分かり易くなってきました。一応載せておきますが。
開始時シート
一番驚くのは「マット紙・ノンブランド」が明らかに茶色な事。
黒は一番多く印刷する色であり、耐久性を持たせる技術の開発にメーカーは力を入れているはずである。きっと。
だからこそ、純正とノンブランドではこれ程の違いが出たのではないだろうか。
純正の変化の無さはさすがの一言。
しかしながら、互換エコリカも耐久性というところでは、なかなかのものである事が分かった。
ブラックインクとカラーインクを購入した場合、合計金額は以下のようになる。
・純正 2,651円
・エコリカ 1,087
・ノンブランド 600円
インクの価格は常に変動しており、時には純正インクよりも互換エコリカインクの値段が高い事もあった。
また、エコリカは2個セットで購入したため、合計が安くなっているところがある。
純正も2個セットがあり、それを購入していれば少し安くなったであろうが、あまり変わらない為に1個の物を購入している。
今回の結果で、「純正やっぱスゲー」というところもあり、「600円に何を期待してるの。充分だ」という意見もあるでしょう。
今後、大どんでん返しがあるやもしれませんので、検証は続ける事にします。
プリンタインクの退色テスト その5 (蛍光灯下・30日目)
蛍光灯下の退色についての報告
見た目に用紙の退色は見受けられないように感じられた。
念のために冷暗所保存用紙と比べたところ、若干退色しているのは分かった。
比べて初めて退色しているのが分かるので、紙を見ただけでは気づかない。
おそらく多くの写真がそうであるように、やはり大切な写真は蛍光灯の光でさえあたらない場所で保存すべきである。
ブラック、シアン、マゼンタにおいてはまったく退色が見受けられない。
フォトシアン、フォトマゼンタは若干退色が分かる程度である。
おおむね屋外と同じように退色は進む事は分かったが、進行具合は1/3〜1/10程度ではないだろうか。
スキャナ画像では違いが分からない為、報告のみですがお許しを。
プリンタインクの退色テスト その6 (屋外・90日目)
以下は三か月後の変化した用紙です。
試験開始日 2014/1/18
検証日 2014/4/18
まず気になったのは、用紙や条件等が分かるようにボールペンで記載した内容が消えてしまい、資料の整理がし辛い事。
プリンタメーカーよりも、「ボールペン業者もっとガンバレヨ」と言いたくなる現実。
まず、用紙は半光沢のものが一番黄ばんでいる。
それからなんと言っても一番の変化は、互換インク・ノンブランドのブラックが茶色になってしまっている事。
エコリカも光沢用紙のものが若干茶色くなってしまっている。
ある程度は予測していたが、ここまで分かり易く純正と互換インクの差が出るとは思っていなかった。
決して、メーカーの回し者でもなく、データの改ざんはしていない事を誓います。
そしてメーカーは是非、マゼンタの染料技術でノンブランドを見習って欲しいものである。
全体的には圧倒的に純正が一番色あせにくいと言えるが、マゼンタ系においては改良の余地があるのではないだろうか。
エコリカもライトマゼンタがんばれ。弱すぎるぞ。
それから、自分は長い間イエローが一番色あせやすいと信じていたが、それはどうやら都市伝説だったようだ。
正確には、メーカーやインクによって色あせやすい色が違うというのが正解だった。
補足になるが、試験用紙の印刷はページプリンタで行っている。
まったく色あせの片りんすら見られない。
黒・耐久性の面ではトナー最強。
プリンタインク退色テスト その7 (屋外・90日目) を数値化して比較
目では分かるのだが、はたしてどのくらいメーカーによって退色に差があるのか。
言葉の説明だけで伝えるのは非常に難しい・・・。
そこで、3ヶ月目の退色テストの結果を数値化してみました。
点数は以下の基準。5点が満点。
変化が見られない 5点
わずかに退色 4点
若干退色 3点
明らかに退色 2点
驚くほど退色 1点
ほぼ消えた 0点
左からブラック・シアン・マゼンタ・イエロー・フォトシアン・フォトマゼンタの点数。
光沢用紙
純正 4-4-3-5-3-2 合計21点
エコリカ 2-5-2-4-2-1 合計16点
ノンブランド 2-3-5-5-1-3 合計19点
半光沢用紙
純正 5-4-3-5-3-2 合計22点
エコリカ 4-4-3-4-3-2 合計20点
ノンブランド 3-3-5-4-2-3 合計20点
マット紙
純正 4-5-3-5-4-3 合計24点
エコリカ 4-5-3-5-4-2 合計23点
ノンブランド 3-3-4-5-3-3 合計21点
純正の合計 67点
互換エコリカ 59点
互換ノンブランド 60点
こうして数値化すると純正がいかに退色耐性があるのかが分かる。
また意外とエコリカの数値が低くなった理由として、フォトマゼンタの強烈な退色ぶりが足を引っぱった形になっている。
それにしても気になるのは、互換ノンブランドのマゼンタ系の退色耐性。
純正メーカーは是非ともこの染料調合技術を取り入れるべき。
プリンタインクの退色テスト その8 (蛍光灯下・90日目)
かろうじて分かるのは互換ノンブランドのライトシアンではないだろうか。
開始後90日経過の用紙
他にもわずかに退色しているが、スキャナで取り込んだ画像では違いがあまり確認できない。
開始直後の用紙
ただ目視した状況を記述すると、やはり屋外での結果と同じようにフォト系の色が退色しているのが分かる。
蛍光灯下での退色と屋外の退色を比較した場合、やはりペースが穏やかになるが結果は同様と言える。